過去の山行一覧「今までに登った栃木の山達」

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2012年03月03日

再訪、雪の枡形山


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
※当コースには一般登山道でない箇所が含まれています。参考にされる場合は自己責任でお願いします。
また雪の無いシーズンの牧場内は、防疫の為関係者以外の立ち入りが禁じられています。

 今シーズンはスノーシューをまだ履いていないが、個人的に3月から暫くアウトドア遊びは中断せざるを得ない事情にある。だが、ぎりぎり休みを一回使える事になった。

 昨晩、宇都宮市内は冷たい雨が降ったが、メッシュ予報では山間部は降雪予報。ここのところ平野部も春の雪が降るなど確実に季節の移ろいを感じる日々である。もし予報が外れて八方ヶ原に降雨があり、雪質が落ちていたら軽く散歩に留めて帰ろうと思っていた。

 県道30号を泉交差点から離れ西に向かい、コーナーの続く山道に差し掛かる。このあたりの道路の積雪具合で八方ヶ原のコンディションが大体想像出来るのだが、今日は昨晩の雪が溶けてシャーベット状になっている。圧雪ではないのでやはり気温が高いのだろう。
 県民の森から登ってくる道と合わせると、その先から段々と路面全体が雪で覆われてくるようになった。先行した車の轍を追いながら快調に進んでいくと、見る見る間に雪の量が多くなり、ついには先行車も途中でUターンしてしまったようである。パジェロミニには嬉しいコンディションだが二駆車にはちょっとキツイ路面かもしれない。

 本日の一番タイヤ痕を付けながら山の駅たかはらへ到着。

 風が多少強く、雪の結晶が時折頬を打つ。だが、朝一で見た天気図はさほど等圧線が込んでいなかったから、そんなに悪い状況にはならないだろう。何よりも頭上には真っ青な空が広がっている。

 雪質は申し分の無いほどのとびきり特上である。出発時の予想は完全に杞憂に終わったようだ。

     
雪で垂れ下がった枝が前方を遮る    本日の一番のり    雪質抜群

 序盤は車道を使い北進する。八方ヶ原北部は車道がぐるりと整備されている。もちろんこの時期は雪に深く閉ざされているので一般車両の通過は出来ないが、趣味や狩猟の人のスノーモービルの往来が結構多い。
 時間が遅くなると、スノーモービルが通過して轍が出来てしまうと思って早く来たのだが、これが正解だった。ベルベットのように敷き積まれた雪面に足跡を刻みながら進んでいくのが楽しい。スノーシューを履いていても10センチから20センチは沈むが、林の中にある道に入りこむと更に深さが加わり、時折膝くらいまで埋まることもある。脇道に入った途端、深い雪に覆われて道自体が不鮮明となった。何処を歩いても同じなので林の中を方角を頼りに進んで行った。

     
見渡す限りの新雪    道路も途中で不明に   

 車道を離れ山の中に入った。桝形山へのルートは整備された登山道があるわけではない。去年、やはり雪の中を登った時は少し先の林道から植林帯を突っ切って最短距離で山頂を目指した。今回は去年の春にアカヤシオ目当てリンゴさんに連れて行って貰ったコースを再現することにした。

 当時のGPSログがあるので迷うことは無いが、緩斜面ではあるが微妙なアップダウンが加わると軽快なスノーシューとはいえ案外ラッセルに体力を消耗する。夏道では要領よく超えることが出来た小さな沢も、今は深く雪に閉ざされている。吹き溜まりの斜面は膝まで埋まりながらの前進となった。

     
山中もまた静寂なり      

 沢を越えるとルートは比較的明瞭になる。とは言っても足跡一つ無い緩斜面なので方角だけは失ってはいけないが、進むに従い段々と記憶に懐かしい景色が見えてくる。夏道ならさして苦労することもない傾斜だが、雪に足を取られると、そう楽には進めない。

 やがて最後の登りを詰めると、そこは山名板一枚が静かに迎える桝形山の頂きである。樹林に覆われ相変わらず眺望に乏しいその山頂からは、向こうに前黒山が大きく聳えていた。間をわかつ桜沢に吹き渡る風が、轟々と恐ろしげな音を立てているのもまた去年と同じであった。

 時間が早かったので、山頂は小休止に留め下山を開始した。往路は孤独なラッセルであったが、帰路は我が足跡が相棒である。

 このままただ往路を辿るのも勿体無いと考え、適当な所で東側にある林道「桝形山線」を目指すことにした。左手に疎林が拡がる。突破するなら此処しかないだろう。

     
三角点石は雪の下       疎林を縫い林道を目指す

 林道手前は僅かに植林帯があるが、適当に降りていったら時折腰のあたりまでも埋まりながら脱出する。去年は逆に林道側から薄手の所を選んで侵入したのだが今年は逆。もっとも僅かな距離なので雪にまみれながら行くのも爽快で楽しいものだ。

 林道に降り立つとスノーモービルの轍がある。林道の終端から戻ってきたのであろうか、間もなく後方より一台通過する。「物好きな奴が歩いているな」ときっと思った事だろう。実際、大間々方面は人気のスノーシューコースだが、桝形山を歩こうとい人は殆どいないだろう。ましてや経路にこの林道を使う人は更に少ないだろう。だが、桝形山にしてもこの林道にしても大間々方面に負けず劣らす、いや、自分的には人が多いあちらより格段に素晴らしい八方ヶ原であると思うのだが。いや、訪れる人が増えるのが嫌なのでここは敢えて声を大にするのを控えておこう(笑)。

 林道を抜ければ再び車道を使い戻ることも可能だが、今年は牧場内を歩いてみたいと考えていた。その前に、そろそろ足も疲れてきたし、先程からガス切れのような気もするので腹ごしらえとしよう。

     
桝形山林道はスノーモービルの先客あり    桝形山林道入口    八方湖に向かう車道

 牧場の傍らにビニールシートを敷いて腰かける。スノーシューを外すと一気に足が自由になって面白いくらいだ。朝方いくらか吹いていた風もどうにか収まったようだ。流れる雲が時折日差しを遮ると、さっと気温が下がる。雲が切れて暖かさが元に戻れば、これほどの雪を前にしてもどことなく春の匂いが感じられるものだ。

 食後は牧柵を超えて駐車場まで直線最短距離を目指す。道も目印も無いこんな広大な雪原はまさにGPSの面目躍如。コースポインタの指し示す方角に向けて雪の海原を踏みしめながら進んでいく。

     
食事ポイントより牧柵    あの樹の元へ、いざ行かん    広大な牧場に我がトレースのみ

 最短距離で直線というのも案外楽ではない。地図ではこれといった変化の無い地形の筈が、超えるとなるといろいろと障害もあり、急斜面の谷下りは時には迂回、また状況に応じては正面突破など。結構な汗をかく。それでも、どこまでも続く美しい雪面を進むのは感動的であり、振り向けば後方に延々と続く我が足跡もかなり非日常的な光景として思い出となった。

 冒頭にも書いたが、今年の春は訳あってアウトドアに興ずることが出来ない。だが、2月に入って雲竜渓谷、赤薙山、そして今回の桝形と季節にふさわしい雪のフィールドを堪能することが出来た。そして先週は粟野のいぶし銀のような薮山、大倉山を楽しむ事も出来た。春のアカヤシオの時期に入山出来ないのは後ろ髪を引かれる思いだが、県北の山に遅い春が訪れ、峰々にツツジが咲く頃にまた山を訪れたいと思う。

     
谷超えも雪なら何処でも通れる    風紋が美しい    延々と続く足跡
  
  

概略コースタイム

《今回は登山とは多少趣が異なるが、約7.5Kmの雪中行動であった》

山の駅たかはら発(8:06)-展望台(8:42)-車道より離れる(9:05)-桝形山(10:04)-
往路より離脱、東の疎林へ(10:34)-林道に接合(10:50)-牧場脇昼食ポイント着(11:28)-
昼食休憩-行動再開(12:09)-山の駅たかはら着(13:18)

2012年02月26日

珠玉の薮尾根と大倉山



-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
※当コースは全て一般登山道ではありません。参考にされる場合は必ず自己責任でお願いします。

 まだまだ雪遊びの時期だと思っていたのに、土曜日は湿った春の雪が宇都宮に降った。やがてみぞれから冷たい雨に変わってしまったが、メッシュ予報を見ると日光や県北も雨予報だったので果たして山の状態や如何に。良い状態でないのは想像に難くない。そんなこともあって、今季まだ履いていなかったスノーシューの予定を取りやめて、薮歩きの腹案を実行することにした。

 今回のお題は粟野と西方(にしかた)の境界にある大倉山と、その東西に伸びる尾根歩きである。この尾根筋は標高こそ300m~500mと決して高くは無いが、宇都宮西中核工業団地から累々と西へ伸長し、谷倉山を超え遥か前日光方面まで稜線をなしていく、その端緒の部分になる。

 もう既に何回偵察を重ねたことだろうか。林道『真上男丸柏木線』に入り、通過痕がまったく無い綺麗な雪の路面にパジェロミニを進める。つづら折れを重ねて峠が近づくと、低い所に発生したガスが覆う風景が拡がる。まるで雲海のようで美しい景色である。

     
バージンスノー    後方に綺麗なタイヤ痕    雲海たなびく

 林道の最高標高点、峠に自転車をデポした。此処が今日の徒歩によるゴール地点となり、下山後は林道を一気に駆け降りて車のデポ地である真名子集落まで約9Kmのサイクリングとなる。
 基本的に下り一辺倒なので体力消費は殆ど無いはずだが、一箇所だけ標高差50m程度の峠超えが待っているのがやや心配の種である。

 今回真名子集落から目的の尾根に到達するにあたり、過去の偵察で数ヶ所候補を検討していた。随分悩んだ末に選出したポイントだがさてどうなることだろう。
 取り付き地の裏手は墓地でここが一番楽に侵入できそうな雰囲気であったが、流石にバチあたりな感じがしたので少し外して横手から取り付く。駐車地脇の寺を城郭のようにぐるりと囲んだ187mP付近は想像通り激しい薮で、薮慣れした自分でもかなり手強い。

     
こちらへ駐車させていただいた    この少し奥のほうから取り付く    序盤は想像通りの檄薮

 足元を見ると小動物の獣道が縦横無尽に走っており、動物達がやすやすと通過している模様。残念ながら人間が通過するには薮の高さが足りない。時折ふと途切れてほっとすることもあるが、すぐにまた泳いで進むような薮が待ち構えている。

 187mPからしばらく東に進む。北側眼下には取り付きに最適と思われたポイントがあるが、こちらは行き止まりの道に民家が一軒、私有地の雰囲気が濃厚なのでパスしたのだ。飼い犬が敏感に反応して吠え立てる。姿は見えぬが、遥か頭上の稜線で薮を払いのける侵入者に敏感に反応しているようだ。

 目論見の地点で進路を転換して一旦谷に降りる。枝尾根に取り付いて主稜線へと詰めていく。高度を上げるに従い段々と薮も薄くなり歩きやすくなってきた。

     
たまに緩むも行く先容赦無し    薮は続くよどこまでも    幾らか薄くなってきた

 主稜線に突き上げてみると、どうやら滅多に歩かれていないようで、道形の形成はほぼ無し。踏跡の痕跡も獣道程度である。あるがままの姿に静置されている自然林の尾根は荘厳で美しい。歩けるのは今の時期しかないだろうが、初夏の候、むせ返る程の新緑で埋め尽くされた光景を想像するのもまた楽しい。

     
尾根に乗ればすっきり    自然林の尾根は美しい    左手にもう一本の稜線が見える

 途中の小ピークで一箇所進路ミス発生。全く正反対に進んでしまった。眼下の集落が視野に入ったのですぐ気がついて登り返したが、この後は小ピークに至るたびに、GPSで現在地の確認を行って地形図とコンパスで進路精査を慎重に重ねる。地形図で見ると一見簡単そうな尾根筋だが、踏み跡がまったく無いので正確な方角取りと尾根形探しが重要。ぼっとしていると、微妙な派生尾根に引き込まれてしまう可能性が非常に高い。

 大倉山の山頂手前、標高差約100mの区間は右手が植林帯、左手がうるさい薮となる。潅木あり笹薮ありススキありとバリエーションに富む薮の急登をこなすと山頂の南の肩へ到達。真名子の集落や歩いてきたルートが良く見渡せるので気持ち良い。天気予報では晴れマークだったのに一向に日差しが出てこないのが残念ではあったが、こんな薮山だけに展望が開けると嬉しいものである。程無く一投足で山頂へ到着した。

     
道なき尾根を詰める    山頂手前で再び薮がうるさくなる    珍しい笹薮
     
ススキは意外と歩きやすい    登ってきたルートが一望    山頂

山頂より478mP方面

 山頂の北西方面は広大な伐採地となっており独特の景観が形成されている。広々とした開放感溢れる眺望は、見通しの効かない薮道をコツコツ登ってきた者にはかなりありがたい。しかしながら、丸坊主にされてしまった山を見るのは実は悲しい事なのだ。

 昼食をどうしようかと思ったが、遠く見える谷倉山、そこに至るルートにもまだキツイ登りがありそうだ。もう少し進んでからにしようと決めた。

 山頂から一旦真西へ急降下。眼下の伐採地のヘリ沿いにコルを目指す。その向こうには樹に覆われた478mPが小さいながらも毅然としてそびえる。標高差は殆ど無いが、途中のアップダウンは地形図で見るより遥かにありそうな気がする。この先のルートもなかなか骨が折れそうである。振り返ると台形状の大倉山は頭頂部が岩に覆われていたことを知る。実はこの岩がこの後のコースの鍵となるのだ。

     
これから向かう478mP    大倉山山頂    伐採地脇を登る

大倉山を振り返る

 伐採地より離れ、再び自然林の尾根を進んでいくと行く手を大岩が遮るようになってくる。到底超えられそうにない岩は右に左にと巻き、目を凝らすと獣達が巧みにルートを形成しているところはそれに従う。大倉山から西の領域はそれまでとは一線を画した荒々しい岩尾根なのである。

     
伐採用ブル道の模様が面白い    再び自然林の尾根    巨岩が尾根を遮る

 緊張感溢れるルーファン(ルートファインディング)と、連続する岩場処理。精神的にも疲れが溜まってきたのでそろそろ大休止が必要だろう。478mP一つ手前の470m級Pにザックを降ろし昼食とした。梢越しに見える谷倉山の伐採地がだいぶ大きく見えてゴールに近づいた事を改めて実感する。

     
次々と岩が出てくる    突拍子も無く社有地の杭    昼食の470m級P

 再スタート後の478mP手前も再び巨岩が行く手を遮る。右手は垂直の壁になっておりなかなかの迫力だ。とても巻くどころの話ではない。左手はやはり獣道が上手に巻いている。ネットで見たレポートもここを通過した人はみな獣道の巧みさに感動しているが、自分もまったく異論は無い。

     
谷倉山伐採地がだいぶ近くなってきた    再び巨岩、左手を巻く    右手は巻くどころではない

 一つ岩を超えた向こう側にピンクリボンを発見する。とかく人の気配が希薄なこのコースでピンクリボン見ると、やおら加勢を得たようで心強い気がする。薮好きな者の足跡ありやと思うと愛おしいものである。
 478mP末端は岩頭になっており、見はらす先には更に進むべき500mPに至る道無きルートが全貌をさらけ出している。

 岩頭からは下巻きながら急降下。尾根形が不鮮明なのでコンパスで決めた方角を外さず一気にコルを目指す。やがて薮に阻まれた小ピークを過ぎると岩尾根は姿を消していく。

     
赤テープ発見!    478mPから向かう500mP    岩よりはましかな?

 500mPに近付くとしだいに稜線の幅が広くなる。左手が植林帯、右手は自然林。足元は薮も無くすっきりと歩きやすい。昨日の雪が少し残っていて多少滑りやすいが、ここまでの経路の緊張感からすればとてつもなく穏やかな並木道である。登りつめた所にあるひっそりとした500mPから下降すればようやくゴールが見えてきた。

     
500mP手前は一変しておだやかな登り    ひっそりと500mP    ゴールが見えてきた

 当初計画ではこの自転車のデポ地から車道を挟み、更に谷倉山を踏んでフィニシュとするつもりだった。この林道の峠から谷倉山へのルートは林道が工事中の頃より是非にと思っていたのだが、今回は体力気力切れということで次の機会にゆずることにしよう。地形図を眺めていると、谷倉山近辺は実にいろんなコースが考えられるエリアなのだ。この箇所を歩く日もそう遠くない将来にきっと訪れることだろう。

 さあ、残りは自転車で駐車地まで帰るのみ。ずっと下り坂だからお気楽なものだ。快適なサイクリングを楽しんで行こうではないか。
 途中の小さな峠超えは序盤こそ元気に漕いで進むも、すぐ脚が廻らなくなってくる。降りて押したほうが断然早い。それでも下りに転じれば爽快そのもの。頬を切る風は思い切り冷たいが、心の中に温めていたルートを歩き通せた充実感が体中を巡り少しも寒さを感じることはなかった。

     
谷倉山はスタミナ切れで次回    自転車が待っていた    車の回収へ約6Kmのサイクリング


概略コースタイム
駐車地発(7:43)-187mP(8:01)-主稜線へ合流(8:45)-286mP(9:28)-大倉山(10:43)-
470m級P(11:41)-昼食休憩-行動再開(12:16)-478mP(12:40)-500mP(13:55)-
林道接合自転車デポ地(14:10)-自転車-駐車地着(15:11)

2012年02月19日

赤薙山


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 丁度一年前の同日、霧降高原スキー場跡から丸山に登った。
 その時に、赤薙山へ至る道筋の雪の感触を掴んでいたので今年は是非赤薙山の山頂を踏んでみたいと考えていた。
 霧降高原近辺は基本的に太平洋側平野部の天気が支配するエリアである。冬の西高東低の気圧配置では晴天に恵まれる。だが、日本海側でどっさり落とした雪の名残が此処にもそれなりに降るので、適度な雪と快晴と、冬の赤薙山は実はいいとこ取りの山なのである。


 外が白み始める頃に自宅を出発すると、大谷川の向こうに現れた日光連山が朝日に赤く照らされている。これから向かう赤薙山の頂きに思いを馳せると心持も自然と高揚する。
 今年は雪が少ないのか、旧霧降道路も標高1,000m付近までは路面にまったく積雪が無い。やがて圧雪路を慎重に進むと旧第三駐車場へ到着。去年は駐車場の入口が閉鎖されていたが、現在工事関係車両用に駐車場が開放されているようだ。

 道路をまたぎ、建設中のロッジ(旧リフト乗り場あたり)脇で足回りを整える。念の為にスノーシューも持ってきたが、雪質を見て不要と判断して車に残置した。
 本日の装備はワカンの下に9本爪アイゼン(6本+横3本の変わった軽アイゼン)である。同時装着は今日が初めてだが効果は如何に。

 取り付きのトレース痕はあちこちに付いているが、主にバックカントリースキーのもののようだ。いずれも昨日かそれ以前か。半分雪に埋もれつつある痕跡を追い、本日の初トレースを刻んでいく。

     
真正面にこれから登る赤薙山    今日の装備はワカンの下にアイゼン    元スキー場の最下ゲレンデより出発

 リフト(スキー場)跡地の遊歩道化整備は着々と進んでいるようで、真新しい案内板などが整備されている。脇には木製の新設階段があり、完成後は今歩いている下が日光キスゲの花畑となるのだろう。ゲレンデを横切るコースなども設置されているようで完成後が楽しみだ。

 雪は適度に締まっていて概ね良好。油断していると時折脛あたりまで潜りながらも、表面がささくれだった硬い箇所を選ぶと沈まず快適に登っていける。斜面一杯に屈託なく描かれているバックカントリースキーヤーのシュプール。営業中のゲレンデでは味わえない爽快感できっと滑っているのだろう。

     
新ハイキングコースが整備されている模様    ザクザクと登る    我が足跡

 斜度のきつい旧第四リフトの区間は昨年同様に辛い登り。何度も何度も立ち止まりながら登っていく。今日は早立ちだから時間の貯金は充分。体力温存、のんびり確実に行くべし。

 最後の急斜面をこなしてキスゲ平へ。今日の本命、赤薙山とそこへ続く雪の稜線がいよいよ姿を表す。

     
快晴なり    キスゲ平までもう少し    キスゲ平到着

 ザックを降ろしてしばし休憩としたが、流れる雲が一瞬太陽を覆うと見る見る間に体が冷たくなってくる。

 この先、焼石金剛までは比較的緩斜面なので楽に登って行ける。先人のトレース跡も所々雪で覆われ消えては現れ。ゲレンデ同様、表面の風紋が鋭い所を選んで歩けば踏み抜きも無い。たまに踏みぬいてもワカンが効いていて心強い。焼石金剛付近の夏道は岩と笹で案外歩きにくいものだが、一面が雪に覆われている今の季節のほうがルートに気を使わなくてすむ分歩きやすいと感じた。

     
   山頂と直前の痩せ尾根    焼石金剛から

 山頂直下にある樹林帯手前の痩せ尾根が見える。夏道で歩くこの稜線は景色がすこぶる良く、赤薙山登山の楽しみと言ってもよいだろう。南側に広くえぐられた斜面は、この季節、純白の雪に覆い尽くされ目も眩むばかりである。

 この痩せ尾根に雪庇があるというのを山レコの報告などで読んでいた。今日も、ここの状況によっては撤退も充分視野に入れていた。

 一箇所目に突き当たった雪庇は右手にトレースあり。北側の樹林の中を縫って進む。やがてトレースは再び稜線へ引き戻され、足幅程度の所を伝っていく事になる。雪の表面は硬くもなく新雪でも無く丁度良い塩梅にワカンが噛む硬さ。少し蹴り込んでみても下層がクラストしている感じは無い。ゆっくりと一歩一歩慎重に進む。やがて樹林帯脇にある道標地点に到達してほっと一息である。

 樹林帯の中は雪付きも少なくてきっと楽だろうと考えていたが、案外これが甘かった。夏道と違ってトレース痕はほぼ直線的に付けられている。急斜面になると、前爪が無いアイゼンなので滑りやすく大変登りづらい。苦し紛れにトレースを外すと踏み抜いたりするので、大人しくトレースを追うほかないのだ。危険こそ少ないが、体力を思いの外奪われ今日一番の難所だったかもしれない。

     
痩せ尾根注意    樹林帯入り口でほっと一息    夏道では見られない光景。ここを登っていく

 女峰山方面へ向かう巻き道もご覧の通り。トレース痕のかけらも無いこのルートは北側にあるので、下手に突っ込むのは自殺行為であろう。

 夏道で記憶鮮やかな、道を塞ぐような倒木くぐり。次に大岩を見るとやがて山頂の鳥居が目に入った。無事赤薙山へ到達である。

 とりあえず山頂は素通りし、かなり薄いトレース痕を辿って西側の肩に進んでみる。奥社跡方面に向かう一つ目のピークへの道筋は、沈黙に閉ざされた感のある近寄りがたいものがあった。

     
女峰山への巻道も深く雪に閉ざされている    赤薙山西の肩より女峰山へ続く奥社跡方面    流石にこの辺は膝までもぐる

 山頂まで戻り思案した。景色の良い焼石金剛まで下って食事か・・・。痩せ尾根もある事だし山頂で腹ごしらえと鋭気を養ってから出発したほうが良いだろうと結論付ける。

 いつものメニューとコーヒーで腹を満たした後、樹の枝に脚が曲がる三脚をくくりつけて初めてセルフ撮りなるものにチャレンジした。その栄えある(?)第一作目が下の写真である。ポーズが硬い、表情が硬い(モザイク処理済なので読者にはわからないだろうが)、我ながらつまらない写真なのだがご愛嬌。色彩感覚に乏しい自分だが、こうしてみるとこのスッパッツの色はどう考えてもアンマッチで笑える。まぁ、恥を偲んでご愛嬌写真と一笑いただければ幸いである。

     
   初めてのセルフ撮り。笑える一枚    いつものメニュー

 食後は山頂の裏手から見える女峰山方面の景色を堪能する。眼下には、見えないが先日訪れた雲竜渓谷があると思えば感慨もひとしおである。

 このコースは帰路はひたすら下るだけ。滑らないように気をつけて、ご褒美のような景色を楽しみながら降りていく。稜線から見る風景は広大で素晴らしいが、雪のついた枝間から見る無雪の平野部も色彩的に素晴らしく贅沢な風景である。

     
女峰山黒岩、直下は雲竜渓谷    女峰山は険しく気高い    樹林帯から今市方面

 痩せ尾根通過は先程の自分のトレースがあるので幾分安心だが、依然気を抜くと危ないので神経質に進んだ。

 焼石金剛付近まで降りてくると、自分以外に下山方面の足跡が混ざる。対向した登山者は居なかったので、どうやら途中で引き返したようである。

     
痩せ尾根と高原山    北側も雪庇があるので油断出来ない    焼石金剛付近から

 キスゲ平付近では登ってくる登山者に遭遇。足元を見るとツボ足で、何も付けずによく此処まで登ってこれたものだと感心した。この登りの緩い区間で少し登っては休み休み。いささか疲れた足取りである。決して早い時間とは言えないだけに赤薙山の山頂狙いも如何なものかと思ったが、挨拶だけで別れたのは今となってはいささか心残りであった。

 程無く丸山方面からスノーシューの若者が降りてきた。合流した快活な彼としばらく会話を交わし、最後のゲレンデ下りに興じる。第四リフト跡はやはり急で、ワカンのテールに体重をかけるとスライドするように下降できるので面白い。尻餅をつくとそのまま数メートルくらいは滑落するが、此処は元ゲレンデなので怖いものは無い。ソリでもあれば滑降でもしてみたいものだ。

 登りで散々汗をかいた区間もあっという間に終了。昨年に続き無風快晴の好天に恵まれたことに感謝しながらゲレンデを後にした。

     
外山、鳴虫山、鶏鳴山、笹目倉山       駐車場まであと僅か

概略コースタイム
駐車場発(7:22)-第四リフト跡始点(8:04)-キスゲ平(8:43)-焼石金剛(9:49)-
山頂西の肩(10:47)-山頂着(10:57)-昼食休憩-行動再開(11:42)-焼石金剛(12:18)-
キスゲ平(12:47)-駐車場着(13:25)

2012年02月05日

快晴の雲竜渓谷

 見頃を迎えた雲竜瀑。
 今年はお誘いを受け、総勢20名弱のグループに参加する。

 自分は雲竜渓谷とは相性が良いようで、昨年に続いての好天。だが、あまりにも陽気が良く気温が高めだったので、氷瀑の状態は段々と衰退しつつあるようだった。雲竜瀑の中間部に大きなクラックが入っており、アイスクライミングで登っている人を見て肝を冷やした。

 今年の渓谷全般状況は、昨年よりは幾らか迫力には欠けるものの依然として見る人を圧倒させる力は充分。
 更なる寒波の到来で最熟成をするのか、あるいはこのまま春に向けて今季の寿命を全うするのか。
 また来年も是非訪れてみたい、そう思わせるに充分な魅力あるスポットである。

序盤の林道歩き 稲荷川砂防ダム監視所からの定番眺望

  雲竜瀑

   

2012年01月03日

二股山東尾根

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-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
※当コースには一般登山道でない箇所が含まれています。参考にされる場合は自己責任でお願いします。

 2012年の歩き初め。直前まで何処にしようか迷っていたが、やはり腹案を一つづつクリアしていこうと考え、二股山の東尾根を登ることにした。

 二股山はここ数年篤志の方が登山道や道標などを整備されているようで、定番コース(一般登山道)が確立しつつある。西側の待居から林道を進み谷沿いに登るルートがもっとも明瞭なコースであり、マイカーアプローチの場合は一般的だろう。此処以外にも南側の加園、東の下沢や中坪からのコースが以前からあったが、道標がしっかりと設置されたお陰で一般ハイカーもより安全に歩けるようになってきている。

 自分の二股山は今回で4回目になるが、前回は一般コースではなく西側の山頂に連なるピーク群を辿る西尾根を登った
 西尾根ルートは思ったよりもアプローチが容易で、藪も殆ど無く所々に手製の道標も見られた。意外に登山者の足跡が濃いコースであった。

 今回の東尾根はネットで見る限り一例の報告があるだけで情報は少ない。自分は加園登山口駐車地からのアプローチで行動するが、取り付き予定箇所を見るとどうにも藪が濃く難しそうだ。過去数回の偵察でおおよそのあたりは付けてあるのだが・・・

 おなじみになった加園登山口に車を駐めて林道を戻る。左手に目指す東尾根の431mPが突出している。稜線沿いの杉木立の並びを見ると地形図の等高線の込み具合が見て取れるようだ。

 目論見の尾根末端手前は藪が濃いのでパス。少し薄手の箇所から入っていくが、谷を一つ挟んだ斜面をとりあえず登っていく。少し高度を上げて谷が浅くなったところでGPSを見て進路修正、トラバースして予定の尾根線に乗る。あとはこの尾根をひたすら追っていけば良い。植林地だが倒木や薄い藪もあり、斜度も地形図通りでなかなか手強い。

     
目指す431mP    ここから取り付く    多少薮あるも概ね良好

 登るにしたがい落ち葉の堆積は滑りやすく、容赦の無い急登にあらがうには木から木へ渡るようにして登るしかない。やがて上の方に岩が見えた。滅多に登山者を迎える事のないであろうその岩は神々しくも見える。その脇に寄り添うようにして辿り着くと、西尾根の414mPが枝越しに大きく見えた。

     
岩場    西尾根の414mP    急登は続く

 急登に喘ぎながらゆっくりと進む。尾根形が更に鋭くなるとようやく斜度が緩んだ。一旦濃い藪に出るが、ここは左側に少し逃げる。すぐ東側が見渡せる眺望地(431mP手前のピーク)に飛び出した。この眺望地は、西尾根を登った前回、下山時に道草をした時に見つけた箇所だ。

 眺望は東側。基本的には二股山の山頂から見える景色と大差ないが、山頂とは標高差が130m程度あるので微妙に見え方が違う。優劣は付けがたいが、ほとんどのハイカーが知らないこの眺望を眺めているという、その充足感に自分が満たされていたのは確かであろう。

     
尾根形が明瞭に    濃い薮は一箇所    小広い東側眺望地

東側眺望

 431mPより高度を下げると、やがて加園から登ってくる登山道と合流。ここからは一般登山道を歩くことになる。南がよく見渡せる途中の展望台からは、前回の西尾根(下写真左)、今回の東尾根(下写真中)がよく見える。

 一投足で南峰に到着した。落葉期の今は日光連山の見通しがよいので爽快だ。

     
登山道展望台より西尾根    今回登ってきた東尾根    南峰より

 いつ来ても緊張するコルへの急降下、そして北峰へよじ登る。以前無かったロープが下がっていて楽に登ることが出来た。さぁ、景色を眺めながら食事としよう。

 NHKの電波中継所の前が伐採されており丸裸になっている。このパラボラアンテナは、此処より直線で18Kmある会社の屋上からもはっきりと認識することができるので、かねてより気になっていたのだ。

     
北側は落葉していて眺望よし    NHK電波中継所周囲が伐採されていた    下山路の背戸山(368mp)

山頂(北峰)より東側眺望

 北峰よりの眺望をゆっくりと楽しんだ後は、下沢に向けて中継所の送電線沿いに下っていく。途中にある背戸山(386mP)はかつて山城だったらしく、切通しや土塁などの遺構が所々に見られる、篤志の方の手により、ほうぼうに設置された標識でその存在を知ることが出来る。いつしかコースが送電線から離れると、踏み跡が薄くなったり急斜面が出てきたり、意外と野趣溢れるルートになりなかなか面白い。

 もう眺望は無いだろうと思っていたら、背戸山手前で北側が望める箇所があった。岩を頂きに冠するかまど倉、送電鉄塔の向こうには羽賀場山からお天気山に続く山並み、その麓に田畑が拡がる里の風景である。

     
送電線沿いを降りる    意外に野趣溢れるコース    背戸山手前眺望地より

 計画では背戸山から南東に尾根を降りる予定でであったが、少し藪が濃い感じがしたので無理せず素直に道標に従い登山道を降りた。

 堰堤のある下沢周回コース起点から延命地蔵のある集落へ出ると、後は駐車地までの車道歩きである。確信犯で途中ショートカットをしたが、明らかに私有地と思われる所を通過してしまったのは若干反省が必要であった。このショートカットが本日大一番の藪こぎと相成り、たっぷり汗をかきながらも無事駐車地へ復帰した。

     
   落ち葉で情緒溢れる下山路    下沢周回コース起点

概略コースタイム
駐車地発(9:07)-取り付き地点(9:14)-岩(9:37)-431mP手前眺望地(10:08)-
加園登山道と合流(10:17)-南峰(10:56)-北峰(11:08)-昼食休憩-
行動再開(11:52)-背戸山(12:49)-車道(13:19)-駐車地着(14:23)

2011年12月31日

2011年最後のモルゲンロート

 初日の出が年の始めを寿ぐものであれば、行く年をいとおしむ、その年最後のモルゲンロートも一度は見ておきたいと思った。

 場所は鞍掛尾根某所。東眺望があったかな?と思いきや、日の出もばっちり。再来年はご来光で登るのも良いだろう。

 朝日に染まる里山の姿にしばし心洗われる心持ちであった。


 拙ブログをご覧いただいている皆様へ。

 春先から、長期に渡って休日が自由に使えない状況でなかなか山行に及ぶことが叶いませんでした。回数は少なくても自分としては毎回全力で臨んだ山行であることは間違いありません。

 今の時代、長文で記事を書くブログというのはごく少数派であると思います。また、それが作り手の自己満足に偏りがちなのは拙ブログとて指摘を免れない事実です。

 願わくば、「こういう山好きな奴がいるんだな」という認識のもと、つたない写真を眺めるだけでも結構です。雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。 

 それではみなさん、来年もよろしくお願いします。


2011年12月17日

鳴虫山~火戸尻山~675mP

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-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
※当コースには一般登山道でない箇所が含まれています。参考にされる場合は自己責任でお願いします。

 鳴虫山から火戸尻山へ連なる稜線に憧れを抱いたのは、栃木の山を歩き始めてすぐの頃だった。
 県内の山歩きガイドブックといえば、分県別「栃木の山」、下野新聞社「栃木百名山」、そして随想社の「栃木の山140」が揚げられる。その「栃木の山140」で読んだこの尾根歩きが、未だ体力も経験も乏しかった自分にはとてつもなく魅力的に感じられたものである。

 子供の頃よく父親に山に連れられ山登りをしたが、登山口から山頂までを往復するいわゆるピストン山行で歩いた経験がまったく無かった。自家用車など持っていなかったせいもあるが、主だった山域が奥多摩方面だった為に電車やバスを使ったアプローチが充分可能であることが幸いだったようである。
 そんな父親の山行スタイルが教わるとも無しに自分の血に流れているのであろうか、自らが中年になって山登りに目覚めてからも周回や縦走コースに自ずと目が向いてしまうのはこんな理由からかもしれない。

 さて、このロングコースをどう歩こうかといろいろ情報収集や思案を重ねたが、一番の問題は"アクセス"をどうするかという事だった。
 車二台であれば登山口と下山口の双方に配置すれば良い。しかし、単独ならばここは工夫が必要だ。だが幸いな事に公共交通機関が利用出来る。

 二番目はコースの難しさ。「栃木の山140」にルートとして紹介されてはいるが、前提として地図読みが出来る経験者向きとの記述がある。だが、これはさほど心配することはない。事実ネットで幾つか見られる踏破記録にもさして難しい所や通過困難な難所があるという報告が無い。地図を見ると電車道のような一本筋の(実際に歩くとそこまで甘くはないが)尾根道である。派生尾根に惑わされる可能性もかなり低そうである。たとえGPSが無いとしてもコンパスで適宜確認しながら歩けばまず間違える事は無いと思う。

 計画は次のように組んだ。

 朝一番で下山予定地である赤井原林道の支線深部に自転車を配置する。車で県道14号に戻り計画していた道路脇スペースに駐車する。最寄りの合の内バス停より始発バスに乗りJR今市駅へ。電車へ乗継ぎ日光駅から徒歩で鳴虫山登山口へ向かう。

 鳴虫山へは一般登山道を使い、山頂からは登山道を外れて火戸尻山までの尾根歩きとなる。火戸尻山からの下山は南の大滝方面へのコースと、今回自転車を配置した新谷登山口へ降りるコースがあるが、鳴虫山~火戸尻山間は思ったより楽に歩けそうなので、最後の部分は地形図を眺めて自分なりにひねりを加えた下山路とした。
 当初計画では、南東にずっと下って行き、小来川郵便局付近まで尾根を拾い尽くして下山する予定であった。だが、よくよく考えてみると日の出前に鳴虫山登山口に立てるくらいでないと、進路に手こずった場合下山途中で日没を迎える可能性が否定出来ない可能性があると判断して計画を縮小した。ただ、この下山路は今後別な周回コースとして是非実現したいと思っている。

 随分と前置きが長くなってしまったが、いよいよ出発である。

 近場の山に登るにしては異例の早起き。4時に目を覚まし、昨晩にあらかた済ませておいた準備を再点検して4時半には自宅を出発する。天気予報はまずまずだ。空の機嫌はどうだろうか。身が引き締まる冷たい空気の中見上げると、星の瞬きがまばゆい。雲は少ないようだ。

 小来川地区に車を進め、深く眠りに閉ざされたままの赤井原林道に差し掛かる。林道の奥は昼間でも鬱蒼とした雰囲気なのに、ヘッドライトを消し去ってしまったらすべての暗闇に押しつぶされてしまいそうな山の威圧感を感じる。
 予定していた箇所へ到着し車から降りると沢の音が急に耳に入ってきた。ヘッドライトにぼおっと照らされた杉木立の森が妖しく光る。これが山の夜なのである。

 自転車を手近な杉の木にくくりつけ、踵を返すようにして林道を戻る。予定の駐車地へ車を駐めてほっと一息ついた。パンをかじりながら待っていると、いよいよ空が白みはじめ、温かいコーヒーをすべて飲み終えた頃にはすっかり明るくなった。バスの時間も近い。身支度を整えていざ出発である。

 駐車地からすぐそばにある合の内停留所で始発を待ち、ほぼ定刻通りにやってきたバス車中の人となる。乗客は自分を含めて3名。

 JR今市駅で日光線へ乗り換える。駅には学生を主として沢山の乗客が待っていたが、宇都宮方面への乗客が殆どで、閑散とした車両で日光駅への一駅の電車旅である。
 アカヤシオの季節にもなると、遠く東京方面からもハイカーが押し寄せる鳴虫山だが、この時期はあまり人気も無いらしく、ザックを背負って日光駅のホームに降り立ったのは自分一人のようだ。

     
駐車地    7:05のバスに乗る    日光駅前にて

 鳴虫山に登るのはこれで三度目だ。三回とも日光消防署裏手の住宅地脇の登山口からなので、ルートは慣れたものである。上部のほうに行くに従い顕著になる木の根は相変わらず相性が悪いようで、それはそれで懐かしい。途中にある神ノ主山は以前に比べて木が伸びてしまい女峰山や男体山の眺めがスッキリしない。

 後ろからやってきた二人組の男性ハイカーに道を譲り、オーバーペースにならないように登って行ったが、以前の二回に比べればまったく余力のある自分の足運びに驚く。若者達に比べれば他愛の無いレベルであるが、にわかトレーニングの中年でもここまでこれるのだなという嬉しさが内心込み上げてきた。

 山頂に着くと先ほどの二人組と先着のもう一人の若者が談笑中であった。まだ時間が早いからなのか、この山を一番訪れる筈の中高年の姿は無い。
 展望台から見える男体山は以前から枝に邪魔されてスッキリしていなかったが、やはり木の成長著しく期待外れの眺望であった。

 今回は鳴虫山は通過点、というよりも出発点に等しい場所である。そんな気負いも手伝ってか、水を一口含んだだけで直ちにザックを背負い直した。

     
民家の裏手にある登山口    鳴虫山名物、木の根階段    鳴虫山頂上

 山頂からは登山道を外れ、火戸尻山への稜線歩きの開始である。出だしから、落ち葉で踏み跡が消された緩い尾根であるが、方角を見誤らなければそう心配するほどのことでも無い。また、縦走目的以外の赤テープも無いので安心である。
 南向きだった尾根が少し東側に偏る頃になると、立派な鹿よけネット沿いに進むようになる。一般コースではないので道標は一切ないが、時折(覚えているだけでも5枚程度はあった)「コンセーレハイキング」と記されたプレートが木に打ち付けられていた。クラブで設置するほど此処が歩かれているのは確かなようである。

     
登山道を外れ火戸尻山を目指す    鹿よけネットが続く    同じプレートを何枚か見かけた

 程無く、ネット越しに東側の眺望が開ける。手前の高平山から南に伸びる稜線が大きく、彼方には上河内の羽黒山と篠井富屋連峰。右手に目をやると鞍掛山から古賀志山、赤岩山までがすっきりと見通せる。

     
ネット越しに東側眺望    羽黒山と篠井富屋連峰    鞍掛山から古賀志山

 ネット脇に僅かに薮っぽい箇所もあったが、概ねここまでは歩きやすく進路に難しさも無い。東の斜面に降りていく鹿よけネットに別れを告げると995mPである。ここからの下りの区間は間伐材が放置されていて、踏み跡も消されていて多少歩きづらい。斜度も緩み尾根形が曖昧なのでルートとしては嫌な箇所だ。

     
ネット脇が若干薮っぽい    ネットは下に降りていくのでここで終了    間伐後放置されているところは歩きづらい

 GPSを出して慎重に進路を探っていくと再び踏み跡が見えるようになる。途中にぽつねんと石祠があったが、振り返ると今日のコース唯一の石祠であった。石祠は建立した人の家の方角を向いているというが、南東に面していたこの石祠。何を想いここに設置したのか、古の人の信仰に触れるような心持ちである。

 「栃木の山140」には919mPは西側を巻くと書いてあったが、ピーク拾いの山旅。踏跡をそっと外れて高みを目指した。想像通り何も無い919mP。だが落胆はしない。
 赤リボンのあるルートに復帰すると日溜まりの広場に出くわした。鬱蒼とした植林帯続きだったので、思わず緊張も解ける。ザックを下ろすことにした。

 日光駅からここまで休憩らしいい休憩は殆どしていなかった。いささか疲れてはいたのだが、少しでも先の見通しを立てたいという気持ちに急かされていたのは事実だった。だが、この穏やかな日溜まりは足を止めるきっかけには充分過ぎるほど暖かである。

     
ルート中唯一の石祠    北側にはうっすらと雪が残っていた    日溜まりの広場で一休み

 日溜まりの広場を過ぎると、次は伐採地に飛び出した。眼前に拡がる開放感溢れる風景に思わず歓声をあげたい衝動に駆られる。

 眼下には殿畑集落が小さく、正面にはどっしりとした六郎地山が文字通り鎮座している。右手奥には白い男体山も見える。溜息の出そうになる眺望を後にして再び鬱蒼とした樹林の中を高度を下げていくと、やがて次なるあかりが差し込んできた。どうやら火戸尻山が杉木立の向こうに姿を現したようだ。

 ここも伐採地で、なかなか気分が良い。この先は眺望は期待できそうにもないので食事にすることにした。

     
眼下の殿畑集落の上にどっしりと六郎地山    火戸尻山が見えた    伐採地で食事とした


威風堂々の六郎地山 いつか登りたい一座だ

 この伐採地からは東側がよく見える。手前の鶏鳴山以前歩いた懐かしい稜線伝いに笹目倉山。その奥には鋸の葉のようにギザヒザした稜線の羽賀場山からお天気山。手前の風雨雷山と重なったピークは双耳峰の二股山に似て見えるので面白い。笹目倉山といえば、宇都宮方面から見えるピラミダルな山容しか思いつかないのだが、山は見る角度によって千変万化である。

     
鶏鳴山から笹目倉山      

 景色と食事を堪能したあとは、伐採地脇の痩せ尾根を辿って火戸尻山への最後の登りにかかる。谷を見下ろすと、先日偵察で上ってきた林道の終点付近が見えた。こうやって俯瞰的に見ることが出来ると地図と現地の一致も手に取るようで面白い。読図を始める人には是非見て欲しいと思わせるような風景だ。

     
伐採地の稜線を渡り火戸尻山への登りに向かう    先日の偵察地が見えた    伐採地稜線から鶏鳴山

 山頂に向けて高度を上げていくと、それまでの植林一辺倒から落葉の自然林に変わっていく。枝だけの尾根にはまばゆい光が差し込んでいる。まるでジャングルジムのような枝の間をかき分けながら進んでいくと、やがて杉木立が再び現れて落ち着いた山頂に到着である。山頂が地味なだけに、迎えてくれた何枚もの山名板の賑やかさが際立つ。

     
葉が枯れ落ちた明るい稜線    歩く人が少ないせいか自然な感じで良い雰囲気だ    火戸尻山へ到着

 山頂からの下山路は2つのコースがガイドブックで紹介されているが、今回は新谷登山口方面をしばらく辿り、矢印のプレートを見て尾根を乗り換える。此処から先は再び登山道を外れる領域だ。

 道なき道とは言っても、山全体がきっちりと植林地なので薮など全くといっていいほど見当たらない。林床を荒らさいないように山仕事の人が綺麗に植林しているので歩くには全く支障は感じないのだ。

 途中648mPに寄り道するも、こちらも動物達の足跡が残るだけの静かなピークであった。

     
ガイドブックは左で下るがここで登山道と離脱    植林帯なので登山道で無くても歩きやすい    寄り道の648mP

 648mPへ寄り道した分岐から東のコルへ一旦下降し、仄暗い樹林の中に立ちはだかる675mPにとりかかる。

 はじめは右手の尾根形を登って行くも、終盤は直登しか選択肢は無くなる。休み休み、木や枝を頼りに登っていくと本日の最終目的である675mPへ到着した。山名板も何も無いピークに腰掛け、汗を拭う。冷たい風にふと見上げると、冬の午後のはかない陽光が差し込んでいた。さぁ、後は下るだけだ。

 675mPからの下りは、地形図で見るより曖昧な尾根形だが、ここまでくればGPSで方角を定めて一直線である。

     
675mPへ右手の微かな尾根形を辿る    何も無いが今日の目的地、675mP    675mPからの下りは尾根形一旦消失

 無事目論見の林道にドンピシャと接合して自転車の元へ。長いようで短い、短いようで長い一日であったが、ルート内容としては久々に充実感溢れる山行となった。

 ちなみに、最後の自転車区間は殆どが下りで、全くといって良い程ペダルを漕がずに済んだのはラッキーだった。実際山歩きを終えた後に登り坂を進むのは結構辛いのを知っているから(笑)

     
目論見の林道に接合して山を振り返る    デポしたチャリ    林道区間終了

【番外編】

 小来川から宇都宮に戻る途中、丁度大谷近辺で日没直前に戸室山のそばを通過。戸室山の頂上からいつか夕日を眺めてみたいと常々思っていたが好機到来。僅か15分足らずで山頂に立ち、暮れ行く夕刻の景色を堪能することが出来た。赤く染まる古賀志山と集落。ここから見える笹目倉山はやはりすっきりとしたピラミダル。そんな故郷の見慣れた山達の美しい黄昏の瞬間を見ながら今日一日を終えた充足感が改めて込み上げてきた。

     
戸室山から男体山と古賀志山夕景    夕日を受けた富士山    日は西の彼方へ

概略コースタイム
合の内バス停発(7:05)-(関東バス)-JR今市駅発(7:37)-(JR日光線)-日光駅前発(7:44)-
鳴虫山登山口(8:04)-神ノ主山(8:44)-892mP(9:00)-1058mP(9:35)-鳴虫山(9:53)-
996mP(10:32)-919mP(11:03)-六郎地山眺望地(11:27)-昼食の伐採地(11:43)-昼食休憩-
行動再開(12:23)-火戸尻山(12:56)-登山道から離脱(13:17)-648mP(13:41)-675mP(14:06)-
自転車デポ地(14:40)-駐車地着(14:59)

2011年11月13日

静かなる明神ヶ岳

 

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 山仲間の"なおさん"から薮山に行かないかと誘いを受けた。薮山とはいえ『栃木百名山』で紹介されている山だから、自分が冬場に徘徊している本当にごちゃごちゃした里山の薮とは風格の違う立派な薮山である。

 計画では、湯西川にある明神ヶ岳持丸山のダブルヘッダー。明神ヶ岳は『栃木百名山』で紹介されている"経験者向コース"のマゴリ沢からのルートでは無く、最近の山行記事で目にする機会が多い滝倉橋からの最短コースである。
 首尾よく明神ヶ岳を終えた後は登山口を移動し、持丸山は『栃木百名山』コースで手堅く片付けるという段取りである。

 最終的に同行する顔ぶれが揃うと、ルーファンや薮漕ぎのことよりもメンバーの屈強な足並みについていけるかどうかという事のほうが専らの心配事になり、見事当日はその予感が的中するのであった。

 道の駅湯西川で待ち合わせた面々は2台の車に分乗し、明神ヶ岳の取り付き地である滝倉橋へと向かう。K249から林道に入ると車の往来は一切無途絶え、路駐する軽四駆車を2台見た限りである。道路は舗装されていて快適だが、路面に落葉がうっすらと積もっていて深山の静けさが感じられる。

 滝倉橋脇のスペースに駐車する。橋の傍らに、寂しげに垂れ下がる少し色褪せた赤い布が下がっている所が取り付き口である。

 一歩足を踏み入れると、踏み跡はかなり濃い。十分に歩かれており、道形が伺える。多少拍子抜けした感もあるが、問題は急登だ。登山道として整備されている訳ではないので、ルートは尾根の真芯を探るような最短直登である。少し湿って土が露出している所は滑りやすく、草木に掴まりながら登っていく。屈強の我がカモシカ軍団はペースを落とさず涼しい顔。これについていくのもなかなか骨が折れるが、まだまだこの時点では自分も負けてはいない。やがて辛かった急登区間が終わると、痩せ尾根に吹き抜ける風が心地良い。第一弾のアルバイト苦行からはとりあえず開放されたようである。

     
薮山な雰囲気を醸し出す登山口    草木に掴まりながら急登    尾根に乗れば心地よし

 南東に伸びる尾根もまたじりじりと高度を稼ぐので決して楽ではないが、それでも取り付きの急登に比べれば鼻歌まじり。1159mP、1361mP、金剛ゾネと進む。稜線の薮は噂ほどは濃くなく、足元の道形もはっきりしているので迷う事はまったく無い。むしろ鋭敏な痩せ尾根であるが故にコースミスのしようが無い区間である。金剛ゾネを過ぎるとシャクナゲが少しうるさくなってくるが、花季に訪れればルートに絡みつくように繁茂するシャクナゲの花もまた一興であろうと思いを馳せる。

     
1361mP先の金剛ゾネ    シャクナゲと笹の小薮    山頂が近づく

 1400m級ピークで進路が北東に切り替わるが尾根の派生が交差するこの辺りが道迷いの一番可能性が高い箇所と踏んでいた。だがこれも杞憂に終わり踏み跡は依然として明瞭である。
 双耳の1400m級ピークから一旦高度を下げたコルからはコース髄一の南側眺望が拡がる。傍らには「ヨガッタァ」と記された板が掛かっている。どいういう由来の命名かは知らないが、決して見通しが良いとは言えないこのルートで唯一景色が"良かったぁ"とでも訳せばピタリかななどとも思った(^_^)

 ヨガッタァ近辺からは丈の低い笹が足元を覆う。尾根形はほぼ消失し踏み跡も千々に乱れるが、赤テープを追わなくても登り易い所を登るべし。容赦の無い急登は本日のアルバイト第二弾である。

 傾斜が緩みすわ山頂かと思いきや、二段腹の山頂手前のテラス。一息いれて数十mの標高差をやっつけると、とうとう山頂へ到達することが出来た。

     
山頂手前のコル    山頂まで標高差200m一気登り   

 山頂は樹がなければ、360度素晴らしい山々が望めるであろうロケーションでありながら、実際には日光連山方面がかろうじて見えるだけである。山頂奥からは、東の方角に雲に隠れた高原山が少し見えた。

 マゴリ沢ルート方面に目をやると、南東の真下にある1550m級Pがこんもりと妖しくも立ちはだかっている。なるほど、こちらのルートはちょっと見た限りではかなりハードルが高そうな雰囲気だ。

 山頂で鋭気を養った後は早速下山にとりかかる。先程登りに喘いだ笹の急斜面も下りは視界が広がり快適である。多少滑りやすい所は笹の中を降りれば自然とブレーキが掛かって楽でよい。

     
遠く女峰山の尾根が大きい    『栃木百名山』ルート方面は密やかに    下山は雰囲気が良い

 ヨガッタァからは再び痩せ尾根を辿り、往路に気づかなかった1159mPの板などもカメラに収めながら進む。取り付き口への急降下は、想像通り容赦なく膝を責めぬく。滑りやすい足元をかばい余計に力が入って、登りより下りのほうが疲れる山道というのも珍しいだろう。

     
葉の落ちた季節ならでは    金剛ゾネ付近の唯一の露岩    1159mP

 無事に滝倉橋に降り立った一行は、晩秋の趣深い静かな堰堤で昼食とした。水面に浮かぶ落葉が美しい。

 ひと時の休息の後、車に乗り込み次なる目的地である持丸山登山口を目指す。

 上坪の集落からダート林道を暫く行くと突然の倒木が行く手を遮っている。単独なら車を置いてそこから先は徒歩となる事態だが、6人で力を合わせれば倒木撤去もたやすいものだ。

 林道終点の鉄塔巡視路を示す黄色ポールが登山口となる。樹脂製の階段があつらえてある道を辿り、古い木橋で沢を跨ぐとその先に階段が続く。
 登り始めるとどうにも調子が出ない。もともと階段とはあまり相性が良くない自分だが、どうやらそれだけでは無いようだ。確実に明神ヶ岳で消耗しているのだ。依然衰えることを知らぬカモシカ軍団の背中も今度ばかりはどんどんと小さくなっていく。どうにか114号鉄塔に着くが、一息入れたところで劇的な快復もありそうにない。

 鉄塔より先は巡視路も途切れ、自然林豊かな山道となる。体力に余裕がある早い時間に来れればかなり素晴らしい山歩きとなるだろう。だが、今の自分には短時間で山頂周回の薮尾根に到達し得る体力はお世辞にも残っていないようだ。

 このままのペースで、下山を待たずに日没を迎える訳にはいかない。自分はリタイヤするが、皆で山頂を踏んできて欲しいと伝える。メンバーに申し訳ないという気持ちと、日没が迫る状態でこのままチームの機動力を低下させる訳にはいかないという思いの交錯する決断である。

 「またいつかリベンジしましょう」

 山頂を共に諦めてくれた一行の、明るい声に大いに励まされた山行の締めくくりであった。

     
滝倉橋のPへ到着    鉄塔巡視路より持丸山を目指す    古い木橋を渡る
           
114号鉄塔より高原山方面      

概略コースタイム

《明神ヶ岳》
滝倉橋発(8:03)-1159mP(9:05)-金剛ゾネ(9:54)-ヨガッタァ(10:20)-明神ヶ岳(10:52)-
行動再開(11:08)-ヨガッタァ(11:24)-金剛ゾネ(11:48)-1159mP(12:14)-GPS電池切れ、滝倉橋着は13時頃


《持丸山》
駐車地発(14:44)-114号鉄塔(14:57)-撤退地点(15:27)-駐車地着(16:16)

2011年11月03日

三依の山、芝草山

 

 五十里湖周辺にある山は、今まで足を踏み入れることが無かった。
 何か特別な理由があるとかそういったことではないのだが、この山域にある1000m級の幾つかの地味な山が「栃木百名山」で紹介されているということは心の片隅にいつも残っていた。

 中には藪に閉ざされて容易に山頂を踏ませてくれそうも無い山もあるが、今回の芝草山はほぼ一般ルートとして紹介されている山である。そんな芝草山に登ろうというMixiの山仲間にご一緒させていただくことにした。

 序盤はよく踏まれた鉄塔巡視路をジグザグに登っていく。少し高度を上げると植林地から林相が切り替わり広葉樹の自然林となる。控えめでちょっと物足りなげな色づきを見せる枝ぶりも、この奥まった静かな山には案外ふさわしいような気がする。

 34号鉄塔へと続く巡視路に別れを告げ、痩せ尾根に乗れば枝越しに見える向こう側の谷に広がる浅い色の錦秋もまた目に優しい。

 やがて第一のピークである"大岩"に至る。衝立のように立ちはだかる露岩はおどろおどろしい雰囲気である。左巻くように進むと何やら長いロープが垂れ下がっている。地形図を眺めると、もう少し大トラバースして1194mPの先の鞍部まで行ってしまえばこのリスキーな区間をパス出来るのではと思ったが、結構高度感があるこの"ロープ場"は適度なスリルも楽しめて、芝草山の名所と言っても良いだろう。事実、ロープを登り切った大岩の岩テラスからは東側の胸をすくような眺望がご褒美で待っているのだ。

 形よく聳える山頂への最後の登りは電車道のような急登である。狭いが落ち着いた雰囲気の山頂からは、高原山方面や遠く田代山方面も望むことが出来る。天気は今ひとつであったが、遠くの山々が冠雪した冬場にまた登ってみたいと思う一座であった。

 下山は往路のピストンである。いつもなら黙々と一人歩きの自分だが、紅葉に負けないようなメンバーの明るい声に染まった下りもまた良いものだなと思った。

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 
登山口   豊かな自然林
 
大岩直下のロープ場   山頂
 
山頂より東側   田代山方面
 
やっと覗かせた青空に映える   遠く高原山を望む

概略コースタイム
グループ山行で時間調整を行いながら行動したが、トータルではほぼ標準CTではなかろうか。


駐車地発(9:34)-33号鉄塔(10:14)-巡視路より離脱(10:22)-大岩岩頭(11:02)-山頂(11:42)-
昼食休憩-行動再開(12:49)-大岩下部(13:29)-巡視路接合(14:05)-33号鉄塔(14:09)-駐車地着(15:04)

2011年10月09日

白根山から金精峠周回


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 今年の夏は諸事情で山に専念出来なかったが、それでも夏シーズンのシメは白根山と決めていた。理想は湯元からのコースであるが、関東以北の最高峰を初めて踏むのには少し体力的に自信が無かったのでオーソドックスな菅沼からのアプローチとし、少し欲目を出して前白根山五色山を踏んで金精峠から菅沼へと降りる周回コースとした。
 金精トンネル脇に自転車をデポして湯元から登り、帰路を短縮することも検討したが、そういう「企画モノ」は次回以降として今回は真面目に白根山の面々を丹念に踏む思いで出発した。

 最近すっかり慣れた早朝出発、いつも通りに夜明け前のいろは坂を駆け上り金精道路で高度を稼ぐと、夜明けの男体山を捉えようとするカメラマンの三脚がちらほら。自分も真似て一枚を収めた。

 菅沼の駐車地に着くと既に沢山の車が並んでおり、各々準備と出発で慌ただしい雰囲気である。こんな早朝なのに流石に人気の名山は違うものだなと感心することしきり。一日の山行で行き会う人が多くても十数名、少ない時はゼロといったコースの多い自分としてはいささか違和感を感じないでもないが、今日のコースは体力的にはキツそうだが観光登山と割りきっているのでたまにはこういうのも良いだろう。

     
夜明けの男体山    早朝から登山者が一杯    名残の紅葉が早朝の青空に映える

 登りはじめは岩混じりの比較的急登。前方にも後方にもハイカーの声が聞こえる登山道も久しぶりだ。はやりの山ガールも沢山見かけるが、彼女たちの華やかなウェアと競わんばかりの「山ボーイ」も目を引く。メジャーな山では若者の多さも既に当たり前のことなのか、登山が中高年の専売特許でなくなったのは良い事だが、地味な服装で見るからにオヤジな自分がちょっと気恥ずかしくなったのも久しぶりである(笑)

 座禅山を巻くようにして登り、斜度が緩んだ途端に目に入ったのが弥陀ヶ池とその向こうに毅立する白根山。よく紹介されるアングルだ。日陰になっている北のガレ場を白い氷雪のようなものが覆っていて美しい。

     
登り始めは岩を縫う急登    初冬の装い弥陀ヶ池から白根山    北斜面はうっすらと氷を纏っている

 登山口からここまで既に標高差500mを登っているので、里山や近郊低山なら山頂に達しているくらいの登高だが、ここから山頂がある眼前の巨大な隆起を目指して更に進むのだ。息を整えながら時折後ろを振り向くと、先程ほとりを歩いてきた弥陀ヶ池とその向こうに広がる登山口の菅沼が塩梅よく配置された風景は一幅の絵葉書のようでなかなか素晴らしい。

 終盤のガレ場は、高度を上げるに従い斜面を氷が覆うようになり緊張を強いられる。しっかりと蹴り込んでいけばなんとかなるが、もう少し気温が下がって氷が締まってくると軽アイゼンが必要になるかもしれない。
 苦労の末、外輪に登りつくと一挙に南の眺望が目に飛び込んできた。凍りついた荒々しい周囲の岩肌が凄い迫力だ。冷たく強い風が吹く周囲は十分な感動をもってして登山者を迎える。

     
弥陀ヶ池と菅沼、絶景也    終盤のガレ場は氷結で気が抜けない    山頂手前の岩塔と西側眺望
     
草が氷結    山頂はこのピークを超えてその先    露出した岸壁が凍結している、凄い!
     
山頂が見えた      

 小さな外輪山に囲まれた中央にある突起のような岩峰が山頂である。気温は2度、日差しに助けられさほど寒さは感じない。山名板の写真(上中)に人は写っていないが実際は山頂に人がごった返していて長居はできそうにもない。この山域は携帯(au)の電波が届くので、記念にと家内に電話をかけてから山頂を後にした。

 南側に降りていくと、形の良いシルエットの山が見える。錫ヶ岳であろうか。砂礫の中を降りていく風景もまたアルペンムードが漂う。五色沼を時折見降ろしながら岩場を一気に高度を下げていくとやがて森林限界に戻り避難小屋へと達した。

     
下山開始、正面は錫ヶ岳か?    道標もアルペンムード漂う    白根山避難小屋

 前白根山へは避難小屋から続く稜線に乗るつもりであったが、せっかく来たのだからと思い、寄り道で一旦五色沼まで降りる。紅葉の季節もとうに終わっており、五色沼の周囲は寂寞とした初冬の雰囲気が漂っていた。湖岸で休憩をとり、水辺の踏跡を辿っていくと前白根山へ登り返す地形図破線道が続く。あまり歩かれていないようで道形も乏しく先行きがやや心細い。もっともいつも歩いている藪山に比べれば十分立派な登山道に思えるのだが、ハイカーの多いここ白根山エリアにしては若干ワイルドな道の部類に入るのではないだろうか。標高差約150mの登り返しは思いのほかきつく感じた。

 苔むした岩や倒木の間を縫うようにしてよじ登っていくと、段々と空が開けてきてハイカーの声が遠く聞こえてくる。あと一歩あと一歩と頑張りながら足を進めてようやく稜線に辿り着いた。避難小屋から尾根に乗ればこの苦労も徒労となった筈と思うと疲れが倍増!まるで地獄から生還してきたような気分だ。草むらに腰を下ろし、しばし冷たい風に吹かれる。すぐそこの岩のピークを登れば前白根山の山頂である。

 那須の朝日岳から茶臼岳を眺めるのとよく似た圧倒的な存在感。目の前に鎮座する形の良い白根山を見ながらゆっくりと食事休憩とした。初夏の頃から携帯していないガスバーナーが今日はザックに入っている。そう、冬の定番のカップラーメンとコーヒー。

 前白根山もかなりハイカーの数が多いが、まだ時間が比較的早いので湯元から直接登ってくる登山者は通過点と考えているのか、長時間滞留する人は少ないので山頂は広い割には静かなものである。

 白根山の勇姿を堪能した後は北にルートをとり、五色山を目指す。左手にはこれまた絵葉書のように美しい五色沼と白根山が目を楽しませてくれる。ガスが去来するたびに陰陽がもたらす湖面の変化が神秘的だ。

     
前白根山頂上    五色沼と白根山    向かうは五色山

前白根山より手前稜線と白根山を望む

 南から昇ってくるガスが周囲を包み始める頃、五色山へ到達。ここより北西の稜線は笹尾根である。砂礫帯を歩き続けてきたせいか、笹道がことのほか優しく感じる。

     
   笹尾根はなんとなく落ち着く   

 国境平まで高度を下げると、もうすでに周囲はいつもの歩き慣れた樹林帯である。ガスに包まれた森を徐々に登り返していくと金精山だ。湯元方面の景色はガスで白く閉ざされている。

     
      ガスで眺望ゼロの金精山

 遠くから見ても尋常ならぬ迫力を持った金精山の笈吊岩は、ガスに巻かれた横からの眺めも異様に迫力がある。そんな金精山からの下りは数ヶ所ちょっとした難所があり、初心者の方はやめておいたほうが無難な所もあった。ロープが掛かっている所はなんとかなるが、昨今の地震や豪雨、従前よりのこの山域の崩壊活動で、中には頭を使わないと安全に通過できないような所もあった。

 金精峠まで無事辿り着くと今日の山旅もほぼ終了となる。菅沼への下りは特に斜度が急な所もなく、かつては交通の要衝として荷駄が行き交ったのではないかと想像されるような古の息吹を感じるような道である。金精山からの下りで追い越した学生グループの賑やかな声も、もうここまでは届かない。後続も先行もまったく気配はなし。最後にはいつもの自分の山行に戻ったのだなと思ったら、向こうからカラフルな原色のウェアを纏った山ボーイ一名と遭遇。軽く挨拶を交わした彼もまた他人の出現に意外な様子であった。静かな登山を好む者なら互いの山行にGoodLuck!と心の中で呼びかけ、そして別れた。

     
金精峠は近い    霧にそびえる笈吊岩が不気味    金精峠から菅沼へ下る

概略コースタイム
駐車地発(5:55)-弥陀ヶ池(7:25)-白根山(8:25)-避難小屋(9:28)-五色沼(9:43)-
前白根山着(10:26))-昼食休憩-行動再開(11:08)-五色山(11:44)-国境平(12:07)-
金精山(12:30)-金精峠(13:14)-駐車地着(14:06)

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リンク集

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    薮山に目覚め始めた頃、毎日飽きずに見ていました。今日の自分に影響大なり。薮山歩きではメンタル面の我が師匠、けむぞうさんのサイトです。ブログのほうも面白くてお勧めです。(そこナニBlogで検索してね)
  • 里山逍遥
    栃木の山とその周辺の低山を巡る日々「里山逍遥」。もぉ、このタイトル見ただけで直ぐに相互リンクを申し込んでしまいました。新田次郎さんと飲んだことがあるという凄い方です。登山に対するフランクな考え方も共鳴できます。
  • リンゴの叫び!
    季節の移ろいと自然の姿に心惹かれるブログ主さんの記事は、山好きな人ならきっと共感することと思います。自分も長い間隠れファンでしたが、この度相互リンクさせていただきました。
  • 北関東の山歩き
    ご夫婦で仲良く山歩き。栃木県内や宇都宮近郊の山はもとより、HPのタイトル通り北関東の山並みを歩かれているNonさんのサイトです。楽しそうな山行記録を読みながら、「是非自分も歩いて見たい」と思うこと度々。
  • 稲妻丁型 一人旅
    バイク仲間の稲妻さんのブログ。いろ~んなところを走られているようです。バイクだけではなく、多方面にわたる記事も楽しみです。
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